【食器類の輸入方法】必要な事前準備や書類、手続きの流れを徹底解説!
中国輸入で食品を扱うことはあまりないようですが、食器類は仕入が安いうえに日本にはないデザインの商品も多いので、輸入販売したいと考える人も多いと思います。
しかし、食器類は食品や口に触れるものとして、輸入の際に「食品衛生法」の対象商品となります。
そのため中国に限らず海外から食器類を輸入するときは、事前に検疫所に届出を出しておく必要があるのです。
これを知らずに輸入すると税関でひっかかり、場合によっては廃棄処分となったり積み戻しになるなど、ビジネスにおいて大きな損失を招きます。
今回の記事では、食器類の輸入を考えている人や食品衛生法に詳しくない人のために、その概要と輸入の流れを解説します。
目次
食品衛生法とは
食品衛生法は食の安全と国民の健康を守る目的で、1947年に制定された法律です。
監督省庁は厚生労働省と消費者庁となり、食品、添加物、器具、容器包装、乳幼児のおもちゃなどが規制の対象となります。
食器類は器具に含まれ、器具には食器、調理道具、食品製造機械のほか、食品保存容器や器具のパーツなどがあります。
器具や容器包装は直接食品と接触して使用されるため、それらに含まれる重金属や化学物質などが溶出することによる食品汚染が懸念されます。
また、乳幼児用のおもちゃは幼い子供が口にする可能性があるため、厚生労働省が指定するおもちゃに対して、製品素材に問題がないかがチェックされるのです。
食器類の規格基準とは
食器類では、材質ごとに許容数値が定められた「規格基準」があり、「一般規格」と「材質規格」の2つに分かれています。
食器類はたいてい一般規格が適用されますが、陶磁器、ガラス製、ホウロウ製の製品の場合は材質規格が適用されます。(詳細については、下記より関連サイトへ移動して確認することが可能です。)
したがって、食器類を輸入する場合、事前に製品の材質を調べた上で適用される規格と照らし合わせて、輸入ができる商品であるかどうかを判断する必要があるのです。
事前調査のためには仕入先から、製品の材質、形状、容量、色柄といった情報がわかる資料やカタログを取り寄せる必要があります。
輸入販売に該当する器具
食品衛生法に該当する器具で、輸入販売対象の商品として代表的なものは下記の通りです。
- 食器類:皿、茶碗、コップ、カップ、弁当箱、水筒、スプーン、フォークなど
- 調理道具:鍋、釜、フライパン、包丁、お玉、トングなど
- 調理家電:コーヒーメーカー、ミキサーなどの直接食品が触れる部分
これらの品目を販売又は営業上使用する目的で輸入する場合は、事前に税関に届出が必要となります。そして検疫所で審査が行われ、商品によっては検査が必要となるのです。
ただし、下記に該当するケースは税関への事前の届出は不要となります。
- 個人用、試験研究用、社内検討用及び展示用の食器、器具等
- 販売または営業上使用することを目的としないのが明らかなもの
- 通常の仕様方法で食品に直接接触しない器具および容器包装
しかし、初めて食器類を輸入する場合、
「この商品は食品衛生法に該当するのだろうか?」
「届出にどのような書類が必要なのか?」
「手続きはどうやればいいのか?」
など、わからないことがいろいろ出て来ると思います。
そういったことも含め、仕入の前に日本で販売できる可能性を調べて疑問を解消しておくことが重要です。「商品が到着して検査を受けたら、販売できなかった」となれば目も当てられません。
相談先は全国に24カ所ある検疫所の食品監視課になります。
下記より電話相談機関一覧表へ移動できますので、必要に応じてご利用下さい。
食器類の輸入手続きの流れ
ここでは実際に食器類を輸入するときの手続きの流れを、下図に従って詳しく見ていきましょう。
【出典:厚生労働省ホームページ・食品衛生法に基づく輸入手続き】
1.食品等輸入届出関係書類の準備
食器類を輸入するときの届出書類として、下記のものを貨物が到着するまでに準備します。
- 食品等輸入届出書
- 品名、材質、形状、色柄等が確認できる資料やカタログ
- 試験成績書(原則、初回輸入時は検疫所から検査を受けるように指導がある)
※ 上図における「衛生証明書」は食品輸入の場合に必要なもので、食器類では不要です。
試験成績書は、輸入に際し自主検査が必要な素材の製品について検査後発行されるものです。後述しますが、自主検査には貨物が届いてから検査を受ける方法と、先に検査を受けて試験成績書を取得して届出書に添付する方法があります。
器具には個別の規格基準が定められている材質があり、自主検査が必要か不要かは下記の通りの製品の材質によって決まります。
- 自主検査が必要な素材:陶器(セラミック)製・プラスチック製・ガラス製・紙製など
- 自主検査が不要な素材:スチール製・アルミ製・ステンレス製
※ただしコーティングがされている場合は自主検査が必要
また、材質が同じ手もカップや皿のように形状が違う場合は、それぞれについて検査を受ける必要があります。色違いや柄違いも同様に別の検体として認識されるため、注意しなければなりません。
2.届出の提出
商品が到着するのに合わせて、届出書類一式を下記の通り事前に提出します。
- 届出の時期: 到着予定日の7日前から可能
- 届出の場所: 貨物を輸入する場所(港・空港)を管轄する検疫所
- 届出の提出: 輸入する都度、提出が必要
3.検疫所の審査と検査
審査内容
貨物が到着すると検疫所の食品監視課において、届け出書類にもとづき検査が必要かどうかの審査が行われます。
審査の主な内容は下記の通りです。
- 食品等輸入届出書の記載内容に誤りがないか
- 輸入製品に有害、有毒な物質が含まれていないか
- 食品衛生法の規格基準に適合しているか
審査の結果、検査が必要と判断された場合は、検疫所の指示に従ってしかるべき検査を受けることになります。
検査の種類
検疫所によって要求される検査には、検疫所が行うものと輸入者が行うものに大別され、全部で4種類の検査があります。
①検疫所が行う検査(費用:国負担)
・モニタリング検査
国が年間監視指導計画に基づいて実施する定期的な検査です。貨物からの抜き取り検査になります。検査期間でも通関をして貨物を流通させることは可能ですが、不合格判定の場合は市場から商品を回収する義務が発生します。
・行政検査
モニタリング検査以外に国が行う現場検査です。初回輸入時や食品衛生法違反が判明時、輸送途上での事故発生時に必要に応じて行われる確認検査になります。
②輸入者が行う検査(費用:輸入者負担)
・検査命令
厚生労働大臣が食品衛生法違反となる可能性が高いと判断したときに、食品衛生法第26条第3項に基づき輸入者に検査の実施を命ずる措置です。国指定の検査機関での検査が必要になりますが、食器類ではあまり例がなく食品対して実施されることが多いです。
・指導検査(自主検査)
初回輸入時や定期的輸入時に必要な項目について、国から指導を受ける検査です。食器類の輸入販売において実施されるケースが多いので、詳細は後述します。
検査結果が出るまでは通関して商品を受け取ることができず、商品は保税倉庫に置かれたままとなります。
自主検査には2種類の方法がある
食器類の自主検査の方法には下記の通り2つの種類があります。
本貨物による自主検査
実際に届いた貨物の中から検査用に商品を抜き取っておこなう検査です。
税関に「見本持出許可申請書」を提出して許可を得たあと、サンプルは検査機関へ送られ「有害な物質が検出されないかどうか」の検査を受けます。
検査中は貨物が滞留するため、倉庫保管料などがかさむことになります。
- 検査費用:貨物によって異なり検査機関に問い合わせが必要。(平均2~5万円)
- 検査期間:検査機関へ問い合わせが必要(平均1~2週間)
検査結果が不合格の場合は廃棄又は積み戻しとなるため、いきなり大量に仕入れることを避け、初回は少量輸入によって実績をつくることをお勧めします。
一度輸入実績をつくると、同じ商品の場合は一定期間(食器類は1年間)、初回の試験成績書を流用できるので便利です。
外国政府機関による自主検査
厚生労働省に登録された海外の輸出国公的検査機関リストに掲載されている機関で、輸入前にあらかじめ検査を行う方法です。
食品衛生法に基づく厚生労働省登録検査機関などで実施された検査結果と同等に取り扱われますので、下記のようなメリットがあります。
- 事前にサンプル検査で試験成績書を入手することにより、輸入リスクが軽減できる
- 届出書に添付することにより、輸入時の自主検査を省略することができる
- 保税倉庫に貨物を置いておく期間短縮が図れるので、費用削減につながる
注意点として、試験成績書と届出貨物が同一であること、試験成績書に製造社名、輸入者名、名称、ブランド名等の記載が必要です。
2009年までは国内検査機関において事前にサンプルによる検査を行い、試験成績書を発行する「先行サンプル検査」という制度がありましたが、廃止されています。
現在は、この厚生労働省が認めた海外公的検査機関で事前検査をするのが、食品等輸入届出手続きの簡素化・迅速化の制度として推奨されています。(詳細は下記参照サイトよりご覧になれます)
食器類を輸入する度に検査機関の試験が必要か?
食器類を輸入するときは、届出書を毎回出すことが必要です。
しかし、同じ商品を定期的に輸入する場合、初回の試験成績書を利用して品目登録をすれば、付与された番号によって自主検査を省略することができます。
品目登録は、登録を行った検疫所に限らず全国の検疫所で利用可能です。
食器類の場合、製造者、材質、着色料、製造方法などの変更がない限り、一度品目登録をすると有効期間は特に限定されませんので非常に便利です。
ただし、品目登録は輸入者単位で行うので、同じ商品でも輸入者が変われば利用することはできません。
食器類の販売時における規制
輸入した食器類を無事受け取っても、下記の通り製品の材質によっては販売時にも規制がありますので注意が必要です。
プラスチック製の食器類
プラスチック製の食器は「合成樹脂加工品品質表示規程」で「食事用、食卓または台所用の器具」に該当するので、原料樹脂や耐熱温度などの表示をしなければなりません。
ガラス製食器
ガラス製食器は「雑貨工業品品質表示規程」で表示義務事項が定められていますので、品名や耐熱温度、取扱い上の注意などを表示する必要があります。
まとめ
食器類を販売目的また営業上使用することを目的として輸入する場合は、食品衛生法の対象となります。対象となる輸入貨物は、都度、輸入届出書の提出が義務付けられています。
最初はいろいろ分からないことがあると思いますので、最寄りの検疫所・食品監視課の相談窓口で事前に相談して詳細を確認するのがいいでしょう。
初回の輸入時は自主検査の対象となるので、検査機関で試験を行うことが必要です。ただし、貨物が到着してから検査を行う方法は、不合格となった場合、商品の破棄や積み戻しになってしまいます。
仕入れた量が大きければ損害も大きくなるので、最初は少量輸入により実績をつくるのが賢明です。同じ商品を定期的に仕入れる場合は、品目登録して輸入することでリスクの軽減が図れます。
また、事前に外国政府機関において検査を行い試験成績書を届出書に添付することによって、輸入時の自主検査を回避することも可能です。この場合、貨物を保税倉庫に滞留する期間も短縮できるので、費用削減につながります。
このように食器類の輸入販売は検査を行う手間がかかるので、取り組む人が比較的少ない傾向があります。
しかし、届出手続きや検査を簡素化・迅速化する制度が設けられていますので、慣れるとライバルが少ない市場で効率よく稼げる可能性があります。
したがって、食器類は輸入ビジネスの対象として取り組む価値は十分あるでしょう。
食器類にまつわる手続きや検査などを自分でやることが大変に思われる場合は、輸入代行業者に任せる方法もあります。
弊社「THE 直行便」は、こういった輸入手続きのプロフェッショナルですので、興味を持たれた方はいつでもお気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!