植物・動物製品に関する輸入禁止・規制の要点解説!植物防疫・動物検疫を理解しよう!
輸入ビジネスを行うときに、注意すべきことの一つに輸入禁止品・規制品があります。
今回の記事ではその中から、輸入禁止となっている動植物や輸入規制品の公的検査に関する情報を解説します。
目次
植物検疫とは
植物検疫は、野菜や果物などの植物を輸出入する際に行われる検査のことですが、その歴史は19世紀までさかのぼることができます。
植物検疫の目的は輸入植物に混じって入って来る病害虫から国を守るためです。
「国を守る」など少し大袈裟に聞こえるかも知れませんが、1840年代にアメリカからアイルランドへ蔓延したジャガイモ疫病のため、100万人が死亡したという被害例があります。
さらに1870年代には、フランスがアメリカから輸入したブドウ苗に混じって、ブドウネアブラムシという病害虫が侵入し、フランスのブドウ畑がほぼ全滅してワイン生産に大打撃を与えた事例もあったのです。
この時、隣国のドイツがこの病害虫の侵入を恐れ、1872年にブドウ苗の輸入を禁止しました。これが世界最初の植物検疫制度だったのです。
日本では1914年に輸出入植物取締法によって植物検疫制度が始まり、今日まで100年以上の間、病害虫からの被害をくい止める役割を担っています。
現代では1950年に制定された「植物防疫法」に基づいて、植物に有害な動植物を駆除することで日本の生態系が守られ、農業生産などの安全が図られているのです。
植物検疫手続きの流れ
時代を現代に引き戻して、植物検疫の流れについて見てみましょう。
検疫の対象は、苗、穂木、球根、種子などの栽培用植物及び野菜、果物、切り花、木材、穀類、豆類等の消費用植物の他、植物に有害な生きた昆虫・微生物など広範囲にわたっています。
輸入植物の検査申請
植物を輸入する場合、輸入する港や空港管轄の植物防疫所窓口に届け出て、植物防疫官の検査を受けなければなりません。
申請は輸入予定日の7日前から可能で、植物防疫所の下記ページから電子申請で行うことも出来ます。
検査申請に基づき下記について検査が行われます。
・輸出国の政府機関による検査証明書又はその写しが添付されているかどうか
(検査証明書:輸出国が病害虫がいないことを確認した証明書)
・輸入禁止品であるかどうか
・検疫有害動植物があるかどうか
輸入植物検査の流れ
上図の通り書類審査の後、3つの種類の検査に振り分けられますが、その内容は下記の通りです。
・検査不要品
植物であっても柱や家具といった生木が加工された製材や、乾燥させることにより病害虫の心配がない製茶や果皮、植物標本など、高度に加工されたものは検査品に該当しません。
そのまま通関へ進んで輸入手続きに入ることができます。
※ ブリザーブドフラワーは高度に加工されたものなので、検査対象外となるケースが多いですが、 輸入時にメーカーなどの製造工程表が必要となります。
・輸入禁止品
日本で未発生であり世界的に被害の大きく、検査で発見するのが難しい病害虫が付着する可能性がある植物、病害虫そのもの、土が輸入禁止となっています。
これに該当した場合は、そのまま廃棄となります。
該当する品目は、下記の農林水産省植物防疫所のホームページで詳細確認できますので、無駄な仕入とならないよう事前にチェックしましょう。
また、ワシントン条約に基づき、絶滅のおそれのある野生動植物に関係する商品は、国際取引が禁止されていますので輸入することができません。
ワシントン条約規制対象は、下記の経済産業省ホームページにて調べることができます。
・輸入検査品
輸入禁止品に該当しない植物のうち、苗木・観賞用植物・切り花・球根・種子・果実・野菜・穀類・豆類・木材・ドライフラワーなどが検査が必要です。
これらを日本に持ち込む場合は、輸出国側の政府機関によって発行された検査証明書を添付して検査を受ける必要があるのです。検査証明書がなければ、植物防疫法に基づき廃棄処分となります。
輸入検査の結果、輸入禁止品に該当せず、検疫病害虫が発見されなければ合格となり、発給される合格証明書をもって輸入できます。
しかし、検疫病害虫が発見された場合は不合格となり、消毒、廃棄、返送のいずれか措置を輸入者が選択しなければなりません。
植物防疫法に関する問い合わせ
植物検疫の流れは以上ですが、輸入植物が植物防疫法の対象かどうか判断に迷うこともあるでしょう。
そういった場合は、各地にある植物検疫所に相談するか、植物防疫所提供の「輸入条件に関するデータベース」で検索する方法があるのでご利用下さい。
動物検疫とは
動物検疫も植物と同様に外国から輸入される動物・畜産物などを介して家畜の伝染性疾病が国内に侵入することを防止するための制度です。
1951年に制定された「家畜伝染予防法」に基づいて、輸入動物や畜産物を通じての伝染病の侵入を防止する業務が行われています。
ただし、家畜伝染予防法とは別に、輸入禁止法第54条により、感染症の病原体を媒介するおそれのある動物として、イタチアナグマ、コウモリ、サル、タヌキ、ハクビシン、プレーリードッグ及びヤワゲネズミが輸入禁止動物に指定されています。
これらの動物は、「厚・農省令第1条」で定める地域から日本へ持ち込むことはできませんので、サル以外はすべての地域から輸入が不可能です。
動物検疫手続きの流れ
動物を輸入する場合、前述の輸入禁止動物以外に悪性の伝染病が発生した地域のものは輸入禁止となります。
代表的な悪性伝染病は、口蹄疫(こうていえき)、鳥インフルエンザ、アフリカ豚熱などがあり、輸入禁止することでこれらの病原体が日本に持ち込まれるのを防いでいるのです。
また、植物と同様に、ワシントン条約に該当する動物は輸入禁止です。
輸入動物の検査申請
悪性伝染病発生地域以外のいわゆる「清浄地域」から指定検疫物に該当するものを輸入する場合は、下記指定期間内に「動物の輸入に関する届出書」を動物検疫所長に届出をします。
・偶蹄類の動物・馬など:到着予定日の120~90日前まで
・鳥類:到着予定日の70 ~40日前まで
そして、輸入動物を搭載した船舶又は航空機が到着する7日前までに、「輸入検査申請書」を管轄の動物検疫所に提出します。
輸入動物の申請は、下記のNACCS(動物検疫関連業務)を用いてオンラインで行うことが可能です。
動物検疫の流れ
検査申請に基づいて書類審査が行われたのち、防疫官の指示に基づいて上図のような流れで検査が行われます。
輸入禁止動物以外の検疫対象動物は下記の通りです。
牛、豚、やぎ、ひつじ、馬、鶏、だちょう、七面鳥、うずら、あひる・がちょうなどのかも目の鳥類、犬、うさぎ、みつばちなどの動物並びに、それらの動物から作られるハムやソーセージ等の肉製品を含む畜産物等。
ハムやソーセージなどの肉製品まで対象となっているのは、加工方法によっては家畜の伝染病の病原体が完全に殺滅されない恐れがあるためです。
指定検疫物を輸入するときは、輸出国政府機関により発行された「検査証明書」の添付が必要なうえに、日本での動物検疫を受けたものでなければ輸入は認められません。
検査は、まず個体確認により家畜防疫上安全であるかどうかの現物検査をします。
また必要に応じて、血清学的検査、微生物学的検査などの精密検査が実施され、総合判断から輸入の合否が判定されるのです。
不合格の場合は、消毒あるいは返送・焼却となります。
生きた動物以外の動物標本、毛皮、羽製品などは、完成品である場合は基本的に検査の必要はありません。しかし、半完成品の場合は加工原材料として検査対象となります。
動物検疫に関する問い合わせ
動物検疫に関する要点を解説しましたが、植物の場合と同様に法的な規則は細かく分かれていて、実際に輸入する際には不明点も多いかも知れません。
その場合は、下記の動物検疫所の問い合わせサイトで「よくわる質問Q&A」などを参考とし、それでも解消できない場合は電話やメールで直接問い合わせましょう。
まとめ
今回は輸入禁止・規制商品の中でも非常に複雑な植物・動物に関する情報をお届けしました。
動植物やその関連商品は、場合によっては国内産業に多大な被害をもたらす可能性がありますので、法律や規制内容に細心の注意を払う必要があります。
また、輸出の際も相手国に甚大な迷惑をもたらす可能性がありますので、同様の規制や検査によって厳重に管理されています。
輸入ビジネスにおいて動植物などの製品を取扱いたいけど不安がある場合は、弊社「THE直行便」でも相談にのることができますので、いつでも気軽にご連絡下さい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!