偽ブランド品への輸入規制強化が10月から開始!! 関税法改正で個人輸入でもNG!
コロナ禍ではさまざまな環境の変化を体験しましたが、感染症対策による外出規制や自主規制は仕事や生活においてのオンライン化を一気に押し進めました。
そのためECサイトを利用したオンラインショッピングの需要が高まり、中国輸入ビジネスでも売上を大きく伸ばした人も多いでしょう。
そういったECサイト市場の活発な動きから、残念ながら偽ブランド品の日本への流入も増え、今年、2022年3月の関税法改正によって10月1日より偽ブランド品対策の輸入規制が強化されています。
今回の記事では、コロナ禍における偽ブランド品の状況と、法改正の内容、そして今後、中国輸入における注意点について解説して行きます。
目次
コロナ禍における偽ブランド品輸入の増加
2021年に財務省が発表した「令和2年の税関における知的財産侵害物品の差止状況」を見ると、税関における知的財産権侵害物品の輸入差し止め件数は30,305件(前年比26.6%増)でした。
下図でわかる通り3年ぶりに3万件を超え、輸入差止金額は、約136億円に上るといわれています。
引用:財務相ホームページ・令和2年の税関における知的財産侵害物品の差止状況
この増加はコロナ禍の巣ごもり需要が原因なのは間違いないと推察されます。
そして、輸入差止件数の仕出国の内訳をみると、下図の通り中国が25,828件(構成比85.2%、前年比30.4%増)と、圧倒的な割合を占めています。
平成22年からの10年においても中国が8割から9割を占めており、近年の中国輸入ブームの影響が大きいことが見てとれます。
さらに中国輸入において差止となった品目を件数で見てみると、バッグ類と衣類で6割を占めていますが、令和2年(2020年)では時計類が倍以上に増加しています。
輸入時計と言えばやはり高級腕時計のイメージが強く、偽ブランド品がかなり摘発されたと推測されます。
輸入差止となった知的財産権侵害物品の内訳を要因別で見てみると、下図の通り商標権侵害品が95%以上となっています。つまり偽ブランド品が、輸入差止の原因の殆どであることがわかります。
このように見ていくと偽ブランド品の日本への流入増加の原因となっているのは、商標権を侵害している中国製製品であることが明確なのです。
そもそも知的財産権とは?
法律の話なので少し難しく感じる人いらっしゃるかも知れませんので、ここで知的財産権について掘り下げておきます。
知的財産権について特許庁のホームページでは
「知的財産権制度とは、知的創造活動によって生み出されたものを、創作した人の財産として保護するための制度のこと」
とされています。
知的財産の種類は下表の通り法律で規定されたり保護されているものが多くあり、それらを総じて知的財産権と呼ばれているのです。
今回の偽ブランド品の輸入規制強化策のベースとして、令和3年(2021年)に改正されたのが商標権と意匠権です。
商標権を簡単に言うと、「自分が使用する商品やサービスに使用する文字やマークを、他と区別して保護すること」です。
具体的には、会社や商品のロゴなどが対象となっており、登録から10年(10年毎更新)の間、法律で保護される権利を持つのです。
意匠権は、「物品・建物・画像のデザインを保護すること」です。
具体的な例として、パソコンなどの家電製品の外観、住居・レストランの外観や内装、アプリのアイコンやウェブサイトの画像などが挙げられ、出願日から25年の間、法律で保護される権利を持つのです。
この商標権と意匠権がどう改正され、どのような影響が出るのかは後ほど詳しく説明します。
実際に輸入差止めとなった商品事例
令和2年(2020年)の差止件数全体は前述の通り30,305件で、そのうち偽ブランド品が占める割合は97.8%(商標権:96.7%+意匠権:1.1%)なので、29,638件とほぼ全てが該当することになります。
バック類、衣類、時計などのブランド品が多く、一例ですが下図のようなものが差止めとなっていました。
引用:財務相ホームページ・税関で輸入を差し止めた侵害物品の事例
下図は名古屋税関で、中国から商標権侵害物品として帽子や手袋など27点を密輸入しようとした日本人を関税法違反で告発した時の画像です。
下の画像は、差止回避するためにシールでブランド名を隠したケースです。
下の画像は差止回避するために、置時計の中にブランド時計を隠したケースです。
これら以外にも偽ブランド品を持ち込もうとする業者の手口は様々で、税関の摘発ケースから学んで年々進化しているようです。
輸入規制強化による個人輸入への影響
この事態を深刻に受け止めた日本政府は、平成3年(2021年)に商標権と意匠権の改正を行いました。
この改正によって、商標法と意匠法において、海外事業者が模倣品を郵送などによって日本国内に持ち込むことについて、権利侵害行為となることが明確化されたのです。
そして、これをもとに今年3月に関税法が改正されました。
改正法により海外事業者が郵送などで日本国内に持ち込む模倣品が、「輸入してはならない貨物」として、税関の取締りの対象となり、令和4年10月1日から施行されています。
個人輸入でも偽ブランド品の持ち込みはダメ!
引用:特許庁ホームページ・海外からの模倣品流入への規制強化について
これまでは個人輸入で「販売を目的としない場合」は、商標権や意匠権の侵害とされず偽ブランド品でも輸入が可能でした。
近年の偽ブランド品は何十万円とする正規のブランド品と区別がつかないほど精巧に模倣されており、しかも数万円で手に入るため個人輸入による需要が一定数存在します。
中国にはそういった購買層を狙った偽ブランド品専門の販売サイトがあり、「スーパーコピー」と銘打って堂々と売られている事実があるのです。
知的財産侵害専門の調査会社によると、偽ブランド品にはA級やS級といった等級もあり、ここ5年くらいの間で最高級とされるN級品が流通するようになったとされています。
これまではそのような偽ブランド品が税関のチェックで差止となっても、個人利用の目的であることを説明すれば法的に取締ることができませんでした。
しかし、今回の改正法によって、たとえ個人利用の目的の輸入であっても「輸入してはならない貨物」とされたため、偽ブランド品と発覚すると没収されても文句が言えなくなったのです。
また、国内のECサイトでブランド品を購入した場合でも、商品が海外から直接送付される場合もあるため注意が必要です。
値段が正規品より割安だったり、怪しげなサイトで購入すると、偽物である確率が非常に高いですので、ブランド品は正規ルートで購入しましょう。
「バレないだろう」と思っても、今回のような規制強化やX線などの技術進歩により、水際対策は高精度化しているのです。
関税改正法の背景にあるものは?
個人輸入に対してここまで厳しい規制がかけられたのには、それなりの背景があります。
前章で見たように、令和2年(2020年)の知的財産侵害物品の輸入差止件数は前年に比べて約27%増加しましたが、逆に差止点数は42%減とおよそ半減しているのです。
これはコロナ禍で個人輸入が増加したことを意味し、現在も続いています。
つまり、個人利用なら偽ブランド品の輸入を咎められないことを利用して、CtoC型のECサイトやSNSなどで、偽ブランド品を転売して差益を稼ぐ個人輸入者が増加しているのです。
日本では偽ブランド品とし販売することは違法行為ですので、正規品として市場価格より安く販売しているのです。これは立派な詐欺行為にあたります。
コロナ禍では規制や自粛によりブランドの専門店も閉まっていることが多く、ECサイトを利用してのショッピングが増えたことも大きな要因となっているのです。
知的財産権の保護活動を行う一般社団法人UDFによると、2021年に国内のオークションサイトやフリマアプリに対して、偽物とした出品削除依頼は58万件を超え、その数は10年前の約8倍にも相当するとされています。
本来なら偽ブランド品を製造販売する業者を摘発する方が、こういった事態の収拾に効果が大きいはずですが、残念ながら日本の法律である商標法と意匠法は、海外では効力がありません。
そういった事情から、関税法を改正して水際での取り締まりを強化しているのです。
偽ブランド品の個人輸入に罰則はあるのか?
輸入業者が偽ブランド品を輸入販売することは以前から法律で規制されており、違反すれば「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はこれを併科」という刑罰が加えられます。
しかし、商用目的でない個人輸入の場合は、改正法でも偽ブランドを扱ったことへの罰則規定はありません。没収され廃棄されるだけです。
ただし、輸入代金は公的に保証されることはなく、輸入者が自分で購入先のECサイト業者と交渉するしか方法がありません。商品を返品することもできないので、自分が損して終わることが多いでしょう。
今回の改正法において、偽ブランド品を日本に持ち込める方法は下記の2つです。
・個人が海外へ出かけた時に購入し、個人使用の目的で持ち込む
・海外の友人・知人から贈り物として発送してもらう
ただし、友人・知人から送ってもらう場合でも税関では相手が業者である可能性を疑うので、認定手続きによって本当に友人・知人であること証明する必要があります。
このような個人間取引で偽ブランド品を入手しても、ECサイトに出品して販売すると商用目的とみなされて罰則対象となるでしょう。
なぜ偽ブランド品を買ってはいけないのか
偽ブランド品を購入したり、それを転売したりすることは、そのブランドの知的財産権を侵害するだけでなく、ブランド価値が生むはずの利益をそこなうことに繋がります。
これは、もしあなたがブランドを開発し利益を得ているところへ、偽ブランドが現れた状況を想像すると容易に理解できるでしょう。
偽ブランドと知らずに購入した人が後で事実を知ったケースでも、販売者や製造者へ向く負の感情も見過ごせないはずです。
さらに偽ブランド品の製造・販売元は、まともなビジネスをしていない違法業者です。
偽ブランド品の購入は、そういった犯罪組織の資金源となるだけでなく、購入者が利用した個人情報やクレジットカード番号などをスキミングし悪用する例も報告されています。
このように偽ブランド品を買うことは、たとえ自分の自己満足のためだけでも、不利益をもたらすこともあるので避けるべき行為なのです。
中国輸入ビジネスで偽ブランド品を扱わない為の注意点
中国輸入ビジネスではノーブランド商品を扱うことが重要なポイントです。
間違っても安いからと言ってグッチやルイヴィトン、ローレックスなどのハイブランド商品を仕入れると、ほぼ間違いなく偽ブランド品をつかむでしょう。
またノーブランド品の中でよく扱われるファッションや靴、鞄、スマホケースなどでも、アニメキャラや著名ブランドに似たデザインなどが使われたものは、商標権や意匠権、著作権などを侵害している可能性が高いので取扱わない方が無難です。
税関のホームページで商標権や意匠権で保護されている商標やデザインを一覧で見ることができます。
将来起こるかも知れないトラブルを未然に回避するために、ご自身が扱っている商品に気になるものがあれば下記サイトでチェックしておくのがいいでしょう。
まとめ
今回は今年(2022年)10月1日より施行された、関税法改正による偽ブランド品の輸入規制強化について詳しく解説しました。
これから中国輸入ビジネスに携わる人にとっては非常に重要な情報であり、特に副業ベースで始める個人輸入の場合、落とし穴になる可能性があるので注意が必要です。
自分では法律を守っているつもりでも、知的財産権侵害は複雑で難しい条件がからむこともあります。
中国輸入は魅力の多いビジネスですが、知らずに偽ブランド品を扱ってしまうこともありますので、絶えず新しい法律や取扱商品の情報には気を配っておきましょう。
ご自身だけでの対応に不安がある場合は、中国輸入代行業のプロフェッショナルである弊社が相談に乗りますので、いつでも気軽にご連絡下さい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!