中国EC市場で急成長を遂げた拼多多(Pinduoduo/ピンドゥオドゥオ)の共同購入システムとマーケティング戦略が凄い!
中国のECサイト市場と言えば、圧倒的な規模で世界一位を誇っています。
その市場でアリババ・グループが大きなシェアを持ち、その後をJD.com(京東)が追いかける形でした。しかし、ここ数年の間に中国のECサイト市場に大きな変化が起こっています。
拼多多(Pinduoduo/ピンドゥオドゥオ)という名前に馴染みがないかも知れませんが、僅か7年の間に急成長を遂げた中国のECプラットフォームです。
そのユニークな販売方法とマーケティング戦略によって、アクティブユーザー数ではアリババを抜いて短期間で中国1位まで昇りつめました。
今回は、その拼多多の急成長の秘密を詳しく解説していきます。
目次
拼多多(Pinduoduo/ピンドゥオドゥオ)とは
「拼多多」は「ピンドゥオドゥオ」と読み、共同購入システムを持つ中国のECプラットフォームで、元グーグルのエンジニアであったコリン・ファンによって2015年に設立されました。
その翌年には中国大手 IT 企業のテンセントから出資を受けて、創業から3年後の2018年には、アメリカ・ナスダック株式市場に「その年の最大の新規株式公開の一つ」として上場を果たすほどの急成長を見せました。
桁違いの成長でアリババ・グループに迫る
2020年5月には拼多多の時価総額が737億ドル(約10兆円:1$=135円換算)となり、それまで2位の座にいたJD.COM(京東)の718億ドル(約9兆7千億円:1$=135円換算)を抜いて、アリババに次ぐ中国ECプラットフォーム業界第2位となりました。
中国のECプラットフォーム業界は、下表の通り世界第一位の圧倒的に大きな存在ですので、その中で5年という短期間でNo.2に昇りつめた拼多多の実力と規模が、いかに凄いものであるかが容易に想像できるでしょう。
2020年12月末時点では、拼多多のアクティブユーザー数が前年比で35%増えて7億8,800万人に達し、EC最大手のアリババ・グループの7億7,900万人を上回って1位に踊りでました。
そして、赤字運営でありながらも、大型キャンペーンを繰り返して規模を拡大してきた拼多多も、2021年には黒字転換にも成功し、黒字運営による安定経営の段階に入ったのです。
この背景には後述するように、営業収入に対するマーケティング費用の比率を、ユーザーのSNS拡散による自動宣伝効果によって徐々に下げていった戦略があります。
そして、圧倒的なアクティブユーザーの数を獲得することによって、損益分岐点上で黒字転換したのです。
共同購入プラットフォームの地方展開による成功の秘密
拼多多の大きな特徴は、「共同購入プラットフォーム」と「価格の安さ」です。そして独自のマーケット戦略によって、それらを中国国内に広めていったのが拼多多が大きく成功した要因です。
販売ターゲットは地方都市の低所得者層
拼多多は「共同購入」で安い商品を売ると言う戦略を前面に押し出し、中国の人口の約7割占める比較的低所得者層が多い三線都市、四線都市といった地方都市をメインターゲットにしたのです。
これは、アリババやJD.comが、比較的裕福な人達が住んでいる上海や北京といった一線都市をターゲットとした戦略と真逆のものでした。
近年の中国では、都市部の人口が約4億人であるのに対し、地方の人口は約10億人で、中国の人口全体の7割以上を占めています。それに応じて、所得層の人口も下図のように分布しています。
地方に住む人の平均収入は都市部の人より少ないですが、不動産価格は地方の方が安く住宅ローンの返済も少ないため、むしろ都市部より地方において経済的余裕があるケースが多くあったのです。
そして、モノを安く買いたいという地方の低所得者層のニーズにもマッチし、スマホの普及によって食料品や日用品、家電などの生活用品の売上が爆発的に拡大したのです。
共同購入を利用したマーケティング戦略とは
拼多多の購入方法には「一人で購入」と、「共同で購入」の二通りから選択が可能で、もちろん共同購入の金額の方が安く設定されています。
そして、共同購入のために複数人数集める方法としては下記の2つがあります。
・他の知らない誰かが共同購入ボタンを押すのを待つ方法
・家族や友人にWeChatなどのSNSを通じてシェアして、共同購入を促す方法
早く商品が欲しい人は単独購入し、特に急いでいな商品は共同購入をするという使い分けがされているようです。
この家族や友人にシェアをして共同購入を促す仕組みが、拼多多のサービスの認知を一気に広めた大きな要因と言われています。
中国では家族・友人との繋がりを非常に大切にしており、それが近年WeChatというLineの中国版のようなSNSによって強固なものになりました。
そういった環境の中で、拼多多のユーザーは気に入った商品を見つけると、WeChatで家族や友人へシェアして一緒に購入するようになったのです。
また、共同購入で安く商品を購入できる時間が24時間以内という設定があり、家族・友人へのシェアだけでなく、時間切れ間近の共同購入商品の中に、自分の欲しい商品がないかという検索方法もよく使われています。
このような仕組みにより、ユーザーは自発的に拼多多の商品情報を拡散してくれるため、商品のプロモーション費用を大幅に削減することができたのです。まさに、この優れたマーケティング戦略が、拼多多の急成長の土台だったと言えるでしょう。
WeChatが拼多多の追い風となった背景
WeChatはテンセントが 2011 年 1 月にリリースした、SNS プラットフォームで、メッセンジャーアプリで、音声、写真、文字などのメッセージのみならず、決済や送金機能(WeChat Pay)も搭載しています。
日本の例で説明すると、Lineからアマゾンや楽天市場につながり、そこで買い物をして決済まで簡単に完了するというイメージです。
その便利な機能によって、商品・サービスの購入から、飲食店や公共料金の支払いまで幅広いシーンで活用されているのです。
下表でわかる通り、WeChatは2020年9月時点で人口約14億人の中国において、12億人以上に普及するという、中国人にとって欠かせないSNSとなっていたのです。
WeChatはテンセントが運営するアプリなので、テンセントの競合にあたるアリババ・グループのタオバオやTmall(天猫)といったECモールへのリンクは、アプリ内ではブロックされる仕組みになっています。また、アリババ傘下のオンライン決済サービス「アリペイ」もWeChatでは利用できません。
一方でテンセントから出資を受けている拼多多は、問題なくWeChatが利用できるようになっており、このことが拼多多にとって大きな追い風なっているのです。
「M2C」と「C2M」による低価格戦略
拼多多のビジネス形態のもう一つの大きな特徴として、「M2C」の採用があります。
「B2C」や「C2C」というビジネス形態はよく聞くと思いますが、「M2C」というのは、「Manufacturing to Consumer」の略語であり、生産者と消費者の間に卸売も小売も挟まず直接取引をする形態です。
これによって、生産者は拼多多のプラットフォームを介して利益を維持したまま、直接消費者へ販売でき、消費者はより安く商品を購入できるのです。
拼多多で、特に生鮮食品や生活用品などのノンブランド商品が、驚くほど安い価格で購入できるのは、このM2C型の形態を上手く利用しているからなのです。
また、この逆のC2M(Customer-to-Manufactory)というビジネス形態も加わり、プラットフォームをより活性化しています。
C2Mというのは、消費者からの「こういった商品が欲しい」という要望を蓄積していき、ある程度のビッグデータに成長したときに、生産者がその製造に着手するものです。
そのような拼多多の成功を見て、アリババも、2020年3月に「タオバオ・タージェ・バン」というアプリをリリース、工場からの直接販売によって地方都市の購買層をターゲットとしています。
拼多多の新たなマーケティング戦略とは
急成長した拼多多ですが、最初から上手く行っていたわけではなく、ECサイト立ち上げとのときから、低品質、偽物が多いという評価が絶えませんでした。
2019年には400万件もの出品が削除されたり、数千件の店舗がクローズされたりするなど、まだまだ課題があったのも事実です。
新たな商品展開により新たな購買層を狙う
そういった状況を踏まえ、iphoneやブランドコスメ、ダイソンなど比較的高価格帯の商品を購入できる環境を整え、さらに自動車も販売するようになりました。
高価格帯の商品やブランド品を扱うことで、「安かろう悪かろう」というイメージを払拭すると同時に、高価格帯商品を購入できるような中流層を取り込もうとしているのです。
さらに、こういった高価格帯の商品やブランド品も、競合のECサイトより安く販売されており、「安かろう、でも品質も良かろう」というブランドイメージを構築しようとしています。
越境ECへの進出
このように、中国国内で快進撃を続ける拼多多は、2019年に越境ECのサービスを開始しました。
アリババ・グループやJD.comに比べると大きく後れをとっていますが、アクティブユーザー数がアリババを抜いて第一位となったことより、海外でも知名度が上がり熱い視線を浴び始めています。
日本の事業者も拼多多の越境ECプラットフォームへ出店するチャンスが広がっていますので、ここではそのメリット・デメリットについて見ていきます。
拼多多の越境ECへ出店するメリット
拼多多の越境ECへ出店するメリットには、下記のようなものがあります。
新しい購買層を獲得できる
拼多多は中国国内第2位の販売力があり、三線都市以下の会員を多く抱えているので、アリババ・グループにはない地方の中所得者以下の購買層へ販売を拡大できます。
SNSによる拡散力が利用できる
WeChatを利用した共同購入プラットフォームを最大の特徴としているので、その拡散力を利用した自動的な宣伝により、費用対効果の大きな販売が期待できます。
先行者利益を獲得できる
拼多多の越境ECサービスはまだリリースして期間が浅いため、他の越境ECよりも競合が少ない分、先行者利益を得ることができる。
店舗コストが安く出店も容易である
先行しているアリババ・グループのT-mall(天猫)では出店最低費用が約288万円、JD.comでは170万円となっているのに対し、拼多多では0円と圧倒的に店舗運営個コストが安く、出店審査も緩いため店舗開設が容易と言えます。
拼多多の越境ECへ出店するデメリット
拼多多の越境ECへ出店するデメリットについては、下記のようなものがあります。
物流コストが高い
他の越境ECでは用意された保税倉庫を安く使えたり、郵送手配のサービスがありますが、拼多多は物流面でまだ立ち遅れており、出店の際には自力で中国国内に保税倉庫を確保して配送手配をするか、日本から直送するかのどちらかになります。
価格競争となる可能性がある
価格の安さがウリのECプラットフォームのため、競合がいる場合は価格競争となる可能性があるので、事前に類似品の販売がないかどうか調査しておく必要があります。
薄利多売の傾向がある
拼多多は、「共同購入」がウリのプラットフォームなので、その効果を最大限に生かすために薄利多売のビジネスが前提となります。そのため、利益率は他の越境ECに出店するよりは、低くなる傾向があります。
以上のようなメリット・デメリットを考慮した上で、拼多多へ出店することにビジネスチャンスがあると判断される場合は、チャレンジするといいでしょう。
生活必需品であれば、コロナ禍以前に中国人が日本に爆買いツアーで押し寄せていたことを考えると、日本の品質のよい商品をリーゾナブルな価格で届けることができれば、大きなチャンスがあるかも知れません。
「THE直行便」が拼多多(Pinduoduo/ピンドウドウ)仕入を導入!
前項で見たように拼多多の販売戦略は、海外へ大きくシフトし始めています。
そのような状況の中で、今年8月より弊社「THE 直行便」は、中国輸入代行業者として業界で初めて拼多多と業務提携を結びました。
これにより弊社システムの中で、アリババ・グループだけでなく拼多多の商品も、最安値級の価格で仕入れて頂くことが可能となりました。
驚くほど安い価格で提供されている商品も数多くありますので、興味のあるかたは是非一度、弊社窓口へご相談下さい。
まとめ
今回は、中国EC市場において新しい旋風を巻き起こしている拼多多について、ユニークな販売戦略を中心に解説し、その成功の秘密に迫りました。
中国のビジネスメディア「晚点(LatePost)」によれば、拼多多は越境ECプラットフォームとして、9月中旬にアメリカ向けのアプリをリリースする予定があり、さまざまなカテゴリーの出品者を募っているようです。
このように、今後、拼多多はアメリカを足掛かりに越境ECへ力を入れる動きを見せています。アリババ・グループやJD.comに比べると参入は遅れていますが、これまで中国国内で見せた急成長を考えると将来が楽しみでもあります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!